田綿秀光

  • 日本
  • 東京都
  • 2021/06/02 登録

田綿秀光

日本には、ドイツ歌曲、フランス歌曲に比肩し得る、日本歌曲という豊かな水脈があります。日本の作曲の歴史のなかでも、歌曲は最も大きな果実を生んできた分野でしょう。作曲が優れた成果をあげるところには必ず優れた演奏者、歌い手がいます。委嘱によって数々の名曲を生み出し、また多くの日本歌曲の名演を積み重ねてきたソプラノ歌手・瀬山詠子さんは、いわば日本歌曲の歴史と共にあるといえます。

日本歌曲は滝廉太郎、山田耕筰に発しますが、幾多の芸術歌曲を生んだのはここ半世紀のことです。とりわけ一九四〇年代から六〇年代にかけては、日本に導入された十二音技法などを中心に、作曲界全体が新しいものへの意欲に満ちあふれ、歌曲にも次々に新鮮な挑戦が続きました。

ソプラノ歌手・瀬山詠子さんは、初めから日本歌曲を選択したのではなく、現代曲から入って、同時代の日本の作曲家に取り組む形で日本歌曲の道を進んできました。それは、常に現代の視点から歌曲を見る彼女の基本姿勢ともなっているものでしょう。リサイタルではメシアンの<ハラウイ>、ヒンデミットの<マリアの生涯>などの現代の大作を取り上げ、また日本の作曲家に新曲の作曲を委嘱し、初演しました。その委嘱・初演作品には石桁真礼生<鎮魂詞>、三善晃<白く>、末吉保雄<おかる勘平>など、芸術性の高さにおいて現代日本歌曲を代表する最高傑作が並び、壮観でさえあります。

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