慈性幸佑

  • 日本
  • 東京都 ※大学生の当時は初音ミク全盛期で、自分もDTMで作曲を始めました。頭の中で展開される音楽をボーカロイドに歌わせた時の感動は、ボカロPなら皆共通するところでしょう。
  • 2019/11/19 登録

慈性幸佑

メジャーアーティストになったハチこと、米津玄師の当時の楽曲を聴くと、大学生の時のことを思い出して懐かしい気分になります。現在は週末に少し作曲するくらいですが、学生時代に作った曲も含めアップしていきたいと思います。趣味で音楽史の研究も進めています。主に日本のライブの歴史をテーマにしています。

■ワグナー「ニーベルングの指環」4部作の日本での公演史の研究~1980年代の潮流を振り返る

リヒアルト・ワグナーのオペラの神髄「ニーベルングの指環」4部作の公演が1987年に行われました。ベルリン・ドイツ・オペラ(西ベルリン)が、総力を挙げて来日し、10月17日、横浜市の神奈川県民ホールでの「ラインの黄金」で幕をあけました。「指環」4部作の一挙公演は、国内、国外のオペラ団体を問わず、日本では初めてのことでした。とくに第4部の「神々の黄昏(たそがれ)」は日本初演。日本でのオペラ公演史上、画期的な“祝祭劇”となりました。

1980年の秋、ウィーン国立オペラ劇場の日本公演が大成功した直後、ベルリン・ドイツ・オペラ総監督ゲッツ・フリードリッヒは「われわれのオペラも近い将来、ぜひ日本で久しぶりの公演をしよう」と決意を固めました。

しかしウィーン・オペラが成功したモーツァルトの「フィガロの結婚」や、ミラノ・スカラ座の日本公演演目の「ボエーム」など、イタリア・オペラの二番せんじではつまらない。ユニークなもの、それは「ニーベルングの指環」だ・・・。フリードリッヒは、佐々木忠次・日本舞台芸術振興会専務理事に会見を申し入れました。

どちらも忙しい日程をやりくりし、2人は西ドイツのシュツットガルトで会いました。フリードリッヒは「1984年のオペラ・シーズンから、ベルリンで新演出による『指環』4部作を次々と公演するが、これは日本公演をも考慮に入れた演出です。ベルリンのシーズンが終われば、そっくり日本に持ってゆきたい」と提案し、佐々木専務は了承しました。

フリードリッヒの新演出は、舞台美術家ペーター・シコーラとの緊密な協力の下に進められました。それは舞台に過去、現在、未来の世界を象徴する巨大なトンネルをしつらえ、4部作をすべてこのトンネル内の空間で上演するという、新鮮で大胆な試みでした。

はたして1984年9月16日初演の「ラインの黄金」、同10月6日の「ワルキューレ」では、客席の戸惑いから「ブー」(非難の合図)やヤジが盛んに飛び出しました。しかしフリードリッヒの演出意図が客席に浸透してゆくに従って、「ブー」は「ブラボー」(称賛の合図)にかわっていき、1987年4月の「神々の黄昏」で3シーズンにわたる「指環」の季節が終わった時、観客は総立ちになって拍手し、「ブラボー」を叫びました。

日本のワグネリアンには「バイロイト至上主義」が根強くありました。「指環」はワグナーの聖地、バイロイト祝祭劇場で公演されるものこそほんもので、ベルリンのものなど二流に過ぎないといいます。「サンマは目黒」の考え方です。

戦後のウィーラント・ワグナーや、最近のパトリス・シェローらによる、バイロイトでの「指環」の新演出と同時に、シュツットガルトでのジャン・ピエール・ポネルや、最近ではミュンヘンのニコラウス・レーンホフなどの新演出もバイロイトに劣らぬ話題を提供しています。

「オペラは演出の時代」とは「指環」のためにあるようなことばで、フリードリッヒによる今回のベルリンの「指環」も、演出の時代に1ページを加える画期的な作品といえましょう。

またバイロイトが、毎年そのつど編成されるオーケストラとコーラスによって演奏されるのに対して、ベルリンのオーケストラとコーラスの、伝統をふまえた優秀さには定評がある。独唱歌手陣は、ジークフリート役のルネ・コロ、ジークムント役のジークフリート・イエルザレム、ジークリンデ役のユリア・ウァラディ、ブリュンヒルデ役のカタリーナ・リゲンツァら、バイロイトで何度も歌った、ワグナーものでは当代一流の歌手ぞろいです。バイロイトで味わう興奮以上のものが、日本で実感できる時代が、どうやら来たようです。
 
ストーリーが、ワグナーの創案になる主要人物の性格を表す動機の組み合わせと、アリアとレチタチーボ(語りことばにふしをつけた部分)の区別がない無限旋律によって演奏され、歌われるのですから、はじめてワグナーのオペラに接した人は、長さと複雑さにまいってしまいます。しかし、このワグナーの世界が少しでもわかり始めると、今度はそのすばらしさにまいってしまう人が多くいます。世界中に、このようにして「ワグネリアン」ができました。

参考:https://www.christianmusicdaily.com/content/view/240/63/

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